第8回

換気について

〜 突然の法改正。寒冷地では悪法? 〜

よく、「日本人は、空気と水はただと思っている」と言われることがあります。私が初めて行った外国は、ギリシャでした。その際、ホテルに到着して最初にやったことが、近くの店でお水を購入することでした。 しかも、ヨーロッパでは炭酸の入った水があるため、ガスの入っていない普通の水の買い方をガイドさんに教わり、やっとの思いで購入したことを覚えています。その時に思ったことは、「外国は大変だな~、日本では蛇口をひねればいくらでも飲料水が出てくるのに」でした。

あれから30年、日本では、ガソリンより高い水を買って飲むことが、特別のことでは無くなりました。 また、最近のキッチンセットでは、初めから浄水器が組み込まれているものも多くなりました。実は、我が家のキッチンセットにも浄水器がついていますが、飲み水は購入しています。

日本の水は、そんなに汚くなったのか? 水道局の名誉のために言っておきますが、水源の水は、とてもおいしいそうです。 しかし、水道管というインフラが整備されてから随分と時間が経ち、また、マンションなどでは、随分と年数の経た建物も多く、マンション内の受水層等の汚染もあるようです。

この八ヶ岳地域は良質な水源を持ち、蛇口をひねればおいしい水が出てくる、自然豊かな地域です。いつまでも水源がきれいに保たれるようにしたいものです。

では、空気の方はどうでしょう。かつて首都圏では、排気ガス汚染や工業地帯における公害問題などで環境対策が進み、昔に比べれば、かなりきれいになったようです。
しかし近年になって、隣国における大気汚染による光化学スモッグ警報が発令されるなど、環境対策も、国境を越えて必要になってきました。建設業界においても、平成13年以降、建物に起因する健康問題が急速に整備されてきました。建物は、人が長く利用する空間です。 特に住宅は、子供にとっては最も長く居る場所です。その住宅が、健康に害を与えてはいけません。

澄んだ空気の八ヶ岳。早朝は特に気持ち良い。

以前にも書きましたが、「建設業界は造り手の論理」で物造りをしてきました。それが、平成11年から13年の法改正で、「住まい手の論理」に変わりました。
住宅を構成する建材や家具の中には、多くの接着剤を使用し、その中には健康上重大な影響を与える化学薬品が含まれていました。 そのため、目まいや頭痛・吐き気などの健康被害が多数発生し、「シックハウス症候群」と呼ばれました。すべての人に発症するものではない為、症状の無い人にはなかなか理解されず、住宅建材等に対する規制には、かなり時間を要しました。平成13年に法律が施行され、住宅の居室(事務所等も含む)においては、1時間当たり0.5回の空気の入れ替えが義務付けられました。 また、室内に使用する建材にもホルムアルデヒド等の発散量に対する等級が定められ、その等級ごとに、大枠として次のように規制されています。

F☆☆☆☆ [基本的に住宅に使用する建材は、フォースターとする]
F☆☆☆ [スリースターを使用する際には、換気量を増やす]
F☆☆ [これ以下の製品は使わない]
F☆ [使用場所の制限はありますが、業界として使用しません]

建物の建材を規制しているのだから、換気は要らないのではないか? と聞かれることがよくあります。建物で生活するということは、その中に家具や電気器具、 生活用品や衣類・本など、実にたくさんの物を購入して、建物の中に納めていくことです。それらの物は生産地も様々ですし、持ち込み方も様々です。日本で購入するものとは限りませんし、どんなに法律で定めても、すべての物に規制はかけられません。換気システムは、そのために必要なのです。

最近の建物は、省エネの観点からも気密性が向上しています。その為、ほんの少しの冷気の流入も気になり、我慢出来ない人が多いようです。 それで24時間換気の給気口を塞いでしまう人が居ますが、時間当たり0.5回の換気量位で室内の温度は下ることはありません。また、人が生活するということは、それだけの湿気を出します。建物の気密性が高いほど、建物は結露しやすくなっており、24時間換気は結露対策にも重要です。それでも、自分が別荘を使用しない期間、すべての電源を落としていく人も居ます。「人が暮らして居ないのだから換気は必要ない」と思っている人も居るでしょう。しかし、これが危険です。以前の「結露」の項でも書きましたが、建物は誰も使っていなくても生きているのです。どうか、人の健康と建物の健康の為にも、24時間換気を切らないでください。




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