結露は皆さんも日常的に経験している事の一つです。たとえば、夏場グラスに冷たい水を入れるとグラスの表面に水滴が付くとか、冬場に窓ガラスが白く曇った中でガラスを拭いて外を見るというシーンは、 TVや映画などでは良く見かけますし私達も自宅など経験している事です。
結露と前回お話した断熱とは大変深い関係に有りまして、快適な住まいと建物の寿命は両刃の剣にもなりかねない怖い関係なのです。 家を暖かく保つ為には断熱材をたくさん入れると、断熱性能の高い暖かい家になります。これは以前の「断熱」の章でも述べた通りであり、断熱にも色々な種類と工法が有ります。
以前北海道において「高断熱住宅」が発売され、建築会社は各社、壁や屋根にたくさんの断熱材を入れた住宅を建て、冬に暖かいということで大変評判になりました。
ところが翌年になりますとそれほど暖かくなくなり、建物のあちこちにシミが目立ち始めました。家の中はカビくさくなり、築後5年で建物は腐り使えない状態になりました。
結露とは温度差によって生じるものです。空気には水蒸気が含まれていますが、空気中に溜めておける水蒸気の量は温度によって異なります。暖かい空気には多くの水蒸気が溜めておけますが、 冷たい空気ですと溜めておける水蒸気の量も少なくなります。空気の温度差が生じた部分で結露が発生し、その部分に水滴がつくようになります。
では、どれくらいの温度差で結露が発生するのでしょうか? 科学的には5℃の温度差で結露は発生すると言われています。
冬場の室温 22℃
外の気温 0℃
これでは窓が結露するのは当然の事です。その為に皆さんには窓についた水滴を拭き取る仕事があるのです。これも、家中の窓となりますとしんどいものです。何であんな高いところに窓を付けたのかと反省することも有りますが、水滴の拭き取りを行わないとカビが発生しますので、反省はともかくせっせとガラス拭きを行います。
そこで近年登場しましたのがペアガラスのサッシです。これはガラスを2枚使い、ガラスとガラスの間に空気層を設けることによりガラス面への結露を少なくするものです。
しかし、いくらペアガラスにしましても、アルミという素材は大変熱を通しやすい性質を持っていますので、窓枠がアルミですと、その部分で結露が発生します。その為にガラス拭きは減りますが、窓枠拭きはなくなりません。
困った事はその先にあります。濡れたサッシは拭き取れば綺麗になります、しかし、それはあくまでも拭き取れる部分だけの話です。建物に取り付けてあるサッシは表面の部分と裏面とが有り、 皆さんが拭き取っているのはあくまでも表面の部分だけの話です。その為に裏面は結露した水滴により常に濡れた状態となり、結露水が木材にしみこんでいきます。その後カビの発生、カビを餌にダニが発生、その後腐朽菌が発生をして建物は腐っていきます。
皆さんの住まいでこんな現象は起こっていませんか?
- 1. 壁にいつのまにか変色した部分がある
- 2. 雨が降っていないのに天井にシミが有る
- 3. 人からカビくさいと言われた
- 4. 基礎の上の方が濡れている
以上の内容が一つでも確認できた場合には建物が結露により被害が出ていると考えた方が良いですし、早急な対処が必要です。断熱性能を上げると言うことは、省エネルギーの面や地球温暖化防止の観点からも早急に取り組まなければなりません。 しかし、施工する側の知識不足からせっかく建てた建物が腐ってしまったら取り返しのつかない事態です。
「自分の別荘は冬場には使用しないから大丈夫」と思っている人はいませんか? 昼間太陽の直射を受けた建物の室温は上昇して湿気を沢山含みます。夜、外気温は一気に下がり室温も低下します。その為に昼間溜めた湿気をはき出すようになります。春に使おうと行ってみるとカビ臭い思いをしたことはありませんか?
では、どのようにしたら結露の発生は止められるのでしょうか?
- 1. 全室換気を設ける
(法律で24時間換気が義務づけられていますので換気扇のスイッチは切らないで下さい) - 2. 外壁・屋根に通気層を設ける(外からは見えないので工事途中に確認する)
- 3. サッシを断熱サッシにする(窓枠も結露しにくい物にする)
- 4. 建物内の室温を一定に保つ(部屋による温度差を無くす)
- 5. 気密層を設ける(気密シートの施工など)
- 6. 断熱切れを無くす(施行途中の確認が必要)
ほんの一部ですが以上の内容をきちんと行わなくては高断熱の建物は施工出来ません。結露対策を真剣に考え、施工に携わる人たちを教育する。現場を確認して記録に残す。
簡単な様で中々出来ませんし、行われている会社が少ないのも事実です。皆様も嗅覚を研ぎ澄まして施工例の建物を見せてもらって下さい。カビ臭かったらNGです。