住宅を建てる際、断熱や気密といった性能ももちろん大事ですが、
「構造的に丈夫なのか」という点も事前に確認すべきポイントです。
日本は地震や台風といった災害が多いので、建物の強度は気になるところですよね。
建物の強度を測る為には構造計算というものがあります。
構造計算の話はなかなか難しく理解するのにおっくうになりがちなので、
「今は技術も進んでいるし、しっかり強度を考えて建てているだろう」といった
なんとなくの思い込みをしている方もいるのではないでしょうか。
しかし実は、日本の木造住宅のほとんどが構造計算されていないという実態があるのです。
本記事では、この驚くべき事実とオルケアの構造計算について、
なるべく分かりやすく解説していきます!
この記事を読んでわかること
- 構造計算の重要性
- 構造計算が義務化されていない理由
- 構造計算の具体的な方法
- オルケアは全棟で構造計算を実施している
– 目次 –
■構造計算とは
構造計算は、建物の強度や安全性を確かめるためのものです。
もう少し具体的に言うと、
地震や台風などの災害に対して、変形や倒壊しないかなどを科学的に検証し、
建物の強度を明確化すること
です。
家の強度を確認する方法は構造計算の他に「壁量計算」や「耐震等級」がありますが、
安全性能レベルの一番高い方法が構造計算です。
■構造計算が義務化されていない実情
記事の冒頭で、「日本の木造住宅のほとんどが構造計算されていない」と書きましたが、
これは一体どういうことなのでしょうか。
実は、ビルやマンション、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの建物には構造計算することが法律で義務付けられているのですが、
木造住宅には構造計算の審査がありません。
正確に言うと、2階建て以下で延べ床面積が500㎡以下の木造住宅には構造計算による構造審査がありません。
これは四号特例と言われる法律で、
四号建築物(2階建て以下の木造住宅など)には、
設計士による構造の安全性の確認を行う審査がありません。
「構造計算をしなくて良い」とはなっていないのですが、
この四号特例により日本の木造住宅の90%以上は構造計算されていないというのが実情です。
「法律で義務化されていなくても自主的に構造計算をすべきだ」と思われる方もいると思いますが、
多くのハウスメーカーや工務店で木造住宅の構造計算は行われていません。
その理由は、義務化されていない事の他に以下が考えられます。
- 構造計算をできる人材が少ない
- 構造審査をできる人も少ない
- 壁量計算と比べてコストがかかる
- 自社で出来ないから外注しなければならない
構造計算をするには高度な知識と経験が必要なのでそれを行える人が少なく、外注するにもコストがかかります。
なので、地域にもよりますが、構造計算するところは非常に少ないのが現状です。
このように構造計算をすることはなかなか難しく日本全国でも数少ないのですが、
オルケアでは基礎を含めて詳細な構造計算を全棟で行っています。
かねてより災害に強い家造りの研究・実践を行なっており、大開口などのデザイン性と裏付けのある構造強度を両立しています。
■構造計算と壁量計算の違い
建築基準法には仕様規定というものがあり、壁量計算はこの中に告示で定められています。
壁量計算とは、地震や台風などによる横向きの力によって建物が倒壊しないかを壁の量だけで検証する簡易的な計算方法で、
最低限行わなくてはいけない検討事項です。
法律的には、2階建て以下で延べ床面積が500㎡以下の木造住宅は壁量計算のみで良いとなっています。
しかし、壁量計算の基準を満たしている住宅でも構造計算の観点から考えると強度が30%ほど足りていないという実態があります。
構造計算を行っていないところは、話の中で「建築基準法に則って構造設計しています」とか「建築基準法を満たしています」などと言ったりしますが、それは壁量計算をしているだけで実際の強度は構造計算レベルに達していないというところもあります。
「建築基準法」というワードが出ると安心してしまいますが、
建築基準法で定めている建物の安全性は「最低限の基準」であって「最適な基準ではない」ので惑わされないようにしましょう。
中には、壁量計算を構造計算と勘違いして「構造計算やっていますよ」というところもあるようなので、
しっかりと知識をつけた上で話を聞くことが大切です。
■耐震等級
耐震等級とは、建物がどの程度の地震に耐えられるのか、その強度を示す指標の1つです。
耐震等級は「耐震等級1」「耐震等級2」「耐震等級3」と3つのレベルに分けられていて、
数字が大きいほど耐震性能が優れています。
住宅を建てる際はどの耐震等級レベルを目標にして施工を行なっていくかを決めて検証していくことが重要になりますが、
実は、耐震等級にはレベルそれぞれに種類が2つあります。
図のように、壁量計算としての耐震等級と構造計算としての耐震等級があります。
壁量計算は耐震性能の参考になる程度で、厳密に科学的に耐震性を評価できるものではありません。
同じ「耐震等級2」という言葉でも、壁量計算と構造計算ではその性能に差があるので、
家を建てる前にどちらの計算方法の耐震等級なのかしっかり把握するようにしましょう。
■構造計算の重要性
2016年4月に発生した熊本地震では震度7の地震が2回発生し、約8300棟の住宅が全壊するなど甚大な被害をもたらしました。
この地震で建築業界に衝撃が走った事態が起こりました。
それは、耐震等級2の木造住宅が倒壊したということです。
実はこれらの木造住宅は構造計算ではなく、壁量計算で建築された木造住宅でした。
2000年基準と呼ばれる現行の耐震基準を満たした木造住宅でも、7棟が倒壊、12棟が全壊してしまいました。
倒壊した建物は接合部の仕様が不十分だったり、地盤が弱かったり、熊本地域の耐震基準そのものが低く設定されていたりといった要因もあるのですが、
一番の理由は構造計算がされていなかったのが原因だと考えられます。
構造計算と壁量計算には耐震性を示す性能に差があり、
より丈夫な家を建てるには構造計算が不可欠なのです。
■構造計算の具体的な方法
では、どのように構造計算をするのか、その方法を簡単にご説明します。
1:建物にかかる重さの調査
まず、以下のそれぞれ重さを調べます
- 建物のそのものの重さ(建物自重)
- 人や家財道具、書籍などの重さ(積載荷重)
- 屋根に積もる雪の重さ(積雪荷重)
- グランドピアノや薪ストーブなどの特に大きいものの重さ(特殊荷重)
建物にかかる重さ = 建物自重 + 積載荷重 + 積雪荷重 + 特殊荷重
2:部材の強度を調査
建物にかかる重さに対して部材が耐えられるかを調べます
3:地震に対する強度を調査
重い家ほど地震の力を大きく受けるので、その力に耐えられるかを調べます
4:風に対する強度を調査
台風がきたときに建物が風に耐えられるかを調べます
構造計算では強風の力を受けても0.3度以下の傾きにしかならないように検証します
5:変形の検証(層間変形)
地震や台風によって構造を支える柱がどのくらい変形するかを調べます
6:平面的バランスの検証(偏心率)
壁の配置が悪かったり大きな開口部があると建物の強度が落ちてしまうので、建物の重さと強度が偏っていないかを検証します
7:上下階のバランスの検証(剛性率)
2階建て以上の建物で各階の強度に偏りが無いかを検証します
このように、
建物に加わる力や荷重に対して部材や接合部がどれくらい耐えられるかを科学的に検証していきます。
■オルケアの構造計算
オルケアでは基礎を含めて詳細な構造計算を全棟で行っています。
かねてより災害に強い家造りの研究・実践を行なっており、大開口などのデザイン性と裏付けのある構造強度を両立しています。
構造計算についてご質問、ご不明点ございましたら是非お気軽にお問合せください。
▼お問合せはこちら お問合せページへ
■まとめ
- 日本の木造住宅ではほとんどが構造計算されていない
- 災害に強い家造りには構造計算が重要
- オルケアでは全棟で構造計算を実施している
構造計算は、家と家財、そしてそこで暮らす人々の命を守る重要な役割を担っています。
しかし、ほとんどの木造住宅では構造計算されていないのが現実です。
これから木造住宅の建築を計画中の方々は、是非、構造計算という選択肢を選んでいきましょう!
次回は更に耐震性を高めるための金物工法についてです。
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