第2回

基礎の凍結深度について

〜 霜柱は力持ち。車も軽く動かします 〜

『凍結深度』 という言葉は、あまり聞きなれない言葉だと思います。

と、言うよりも、通常の生活ではまったく必要としない、いわゆる業界用語のひとつです。東京にお住まいの方は、知る必要はほとんどありませんが、東京でも八王子などの寒い地域では、知っておく必要のある言葉です。今回も、外からは見えない、土の中の部分についてお話ししていきます。

冬の八ヶ岳

夏ともなると、東京では、気温30度を超える暑い日が何日も続きます。いわゆる真夏日ですが、ここ数年では、その最高気温が毎年のように更新されているようです。
暑がりの私としては、涼しく、とても過ごしやすい夏の八ヶ岳は、大好きな場所です。私に限らず、文字通り避暑地である八ヶ岳地域は、東京人にとっては魅力的な場所です。しかしその反面、冬の期間の寒さは、厳しいものがあります。

東京地方においても、昔は、冬ともなると地面に霜が立ったり、外の水が凍ったりしたものでした。しかし近年では、地球温暖化の影響か、夏の暑さが増し冬の寒さが和らいだような気がします。八ヶ岳地域においても、近年の冬場の寒さは和らいでいるようですが、建物を建てる際に注意しなければならないのは、最近の気温状況ではなく、過去にどれ程の寒さがあったかを知ることなのです。地震でも台風でも大雨でも、暑さも寒さも、過去に一度でもあったことは、今後も十分に起こり得るからです。
記憶に新しい大雨の被害は、かつて100年に一度と揶揄されたものが、最近では3年に一度とも言える頻度で発生しています。

凍結深度とは、寒さによって、地盤が凍る深さのことを言います。地盤が凍るというのは、外気温が最低気温になった際、地中の温度が0℃に達する地点よりも浅い部分で、土が含んでいる水分が凍り、霜柱のよう盛り上がる(膨張する)ことです。例えば外気温がマイナス10℃になったとします。地中深く掘り進んでいくと外気温の影響が薄らいで、地中60cmのところで温度が0℃より温かいとします。この深さを凍結深度が60cmといいます。ですから、建物の基礎の底盤が地中の凍結深度より浅い部分にあった場合には、霜が建物を持ち上げてしまうことがあります。持ち上がった建物は、地中の霜が溶けるのと同時に、また沈みます。それが繰り返された結果、建物は傾いたり、どこかで水平が取れなくなったりします。したがって建物の主要基礎の底盤は、凍結による地盤変化の影響を受けない深さまで、掘り下げる必要があるのです。

では実際、凍結深度とは、どれ位の深さなのでしょうか。八ヶ岳地域に限定すると、大泉地区で60cm、北杜市おとなりの長野県富士見地域で85cmとされています。この数値は、特定行政庁がそれぞれの地域に応じて定め、道路の新設や水道管の埋設などの際の目安としているもので、建物の建築確認申請の際には、基礎が適合しているかの審査も行われます。

前回までのお話の中で書いたように、八ヶ岳南麓の北杜市の多くの町は今現在、2階建てまでの建物の建築確認申請は、義務付けられていません。義務付けられていないからか、認識が無いからか、あるいは最近は暖かいから大丈夫、という安易な判断からか、基礎の工事で、凍結深度が守られていない現場を見る機会が多いのも事実です。 又、凍結深度をクリアーする為に基礎のまわりに土をかぶせる施工もよく見かけます。これは基礎の底部が前回お話した地耐力の充分にある地盤にあって初めて認められるものです。細かな点ですが、基礎のまわりに土を被せる場合はよく転圧しないと、その後1~2年で土の厚みが減少し結果凍結深度をクリアーできないケースが多くあります。

地球環境を考え、長寿住宅の建築を目指す企業の多くは、木造でも50年から70年は使える建物であることを前提とし、努力研究しています。 建物の耐用年数を増やすことは、住む人にとっても、地球資源の観点からも、とても重要なことです。断熱材をたくさん入れ、複層ガラスのサッシを使った暖かく住める住宅であっても、肝心の基礎が浅かったために、地盤の凍結の影響を受け水平を失い、結果、その価値も失ってしまうことも起こり得るのです。

また、近年の別荘ブームに乗って、八ヶ岳地域にも様々なハウスメーカーが進出し、建物を造っています。凍結深度が、特別な地域に指定されるものであるため、業者側がそれを知らなかった、という事態も発生しています。

前回お話しした地耐力と同じように、この凍結深度についても、八ヶ岳地域の建築では、とても重要なことのひとつなのです。

自分の建物は、夏場、別荘としてしか使わないので大丈夫! と思っていませんか? 建物は、私達が使用しなくても、しっかりその場所に建っています。春も夏も、秋も冬も、台風の時も、地震の時も・・・。家は自然環境に耐え、休むことがありません。

表現が大袈裟ですが、せっかく建てた建物が、八ヶ岳の地平線上に傾いて沈没していくようなことのないようにと願っています。




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