第1回

地耐力について

〜 土地の素顔を覗いてみよう 〜

昔から、「家造りは、土台をしっかりとすること」と言われています。

ここで言う土台とは基礎のことを指しており、しっかりとした基礎を造っておかないと、家は永くもたない、という意味です。この教えは現代にも充分に通じるものではありますが、現代では「しっかり」の意味がより具体的になり、科学的に分析し、様々な試験データの裏付けによって規定されるようになりました。

基礎工事の様子

建物の荷重を支えるのが基礎ですが、その基礎に掛かった荷重は、その下の地盤に伝わります。建築基準法では、地盤が支えうる耐力(地耐力)によって基礎の構造を選択することを、以下のように定めています。

  • (地耐力30kN/㎡以上) 基礎杭、またはベタ基礎、または布基礎
  • (地耐力20kN/㎡以上30kN/㎡未満) 基礎杭、またはベタ基礎
  • (地耐力20kN/㎡未満) 基礎杭、または地盤改良を行う

それに対して建物の荷重は、八ヶ岳地域の一般的な傾斜地で、30坪程度の木造2階建ての建物の場合、以下の数値が基礎の荷重も含めた平均的な荷重です。

  • (布基礎の場合) 18kN/㎡~23kN/㎡ ※布基礎のベースに掛かる荷重
  • (ベタ基礎の場合)20kN/㎡~23kN/㎡ ※底盤に掛かる荷重

ここで言う地耐力とは、建物の基礎の下端が地盤に接する部分を指しており、地表面の硬さを言っているものではありません。この先にも述べますが、大泉地区における基礎の根入れ深さは、冬季の地盤の凍結を考慮した60cm以上と定められています。 その場合には、あくまでも地表から60cm以上の深さの部分の地耐力が問題となります。

自分の土地の地層を知ることは、土地の歴史を知ることであると言えます。ご自身の知っている土地は、住宅地として綺麗に整備されていたり、木立の中にあったりしていて、昔の状態はわからないのではないでしょうか。

建築を行う際に重要となる地盤の深さは、地表より3.0m~5.0m位迄のことです。一般的な土地の場合、表面は黒土により覆われており、その深さはおよそ50cm~150cm位です。(場所により異なります)黒土の下には、赤土と呼ばれる黄色い/褐色土の層(ローム層)があります。表層の黒土は、枯葉などが腐植し堆積して出来た地層で、畑などを行うには良好ですが、建築には適しておらず、その地耐力は20kN/㎡程度しかありません。赤土は、火山の噴火により火山灰が堆積して出来たもので、硬く引き締まった層を成しており、50kN/㎡程度の地耐力があります。八ヶ岳が活発に火山活動していた時期に出来た地層であり、それは数万年前のことです。

数千年から数万年前の土地の状況を知っている人はいません。表面的にはしっかりした土地と思えても、以前は川があったり、沼であったり、水田であったり、etc …。
土地には、様々な歴史があります。タイムマシンが発明されていない現在、土地の歴史は、その地層から判断するしかありません。

現代において、土地の歴史を知る最も簡単な方法が、「スウェーデン式サウンディング」 による地盤調査です。この試験方法で使用されるのは、先端にスクリュー状のポイントを取り付け、また、自由に上下し、途中で固定も出来る受け皿(クランプ)を取り付けた、長さ80cmの鉄の棒(ロッド)です。そのクランプ部分に円筒形のおもりを段階的に載せていき、一枚載せる都度、ロッドが下方に沈むかどうかを記録していきます。一定のおもりを載せてもロッドの沈み込みが無く、静止している場合には、先端のスクリューで土を掘進しながら強制的にロッドを貫入させ、25cm貫入するのに、スクリューが何回転したかを記録します。それと合わせ、 スクリューが貫入する際に伝わる振動や感触、「ジャリジャリ」、「ガリガリ」などの音も記録され、おおまかな地層を判別する目安とされています。

家を建てるに当たり、地盤の様子を知ることは大切なことです。前記した通り、地耐力が特定されなければ基礎の構造は選択できず、工事の金額も算出できません。その為、建築工事の契約を行う前には、地盤調査が不可欠になります。建築を行うために最初にしなければならないことは、地盤の強さを知ることなのです。

最近の家造りはしっかりしている、と感じている方が多いかも知れませんが、ほんの数年前(平成12年)までは、まったく違っていました。当時までの建設業界の常識は、

「建築会社は基礎から上を造っているのであって、地球は造っていません。だから、地盤の責任は持てません」

というものでした。
そのため、引渡し以降、地盤沈下が発生しても保証がされない、という被害が多数発生しました。建築基準法の改正によって、建築を行う際には事前に地盤調査を行い、地盤に見合った基礎構造の選定が義務付けられましたが、 その徹底と認識には、まだまだ地域差があることも事実です。実際にこの八ヶ岳地域においても、未だに地盤調査を行わない業者も存在しています。

家を建てようとしているお施主さんに間取りや外観や使用材料のご説明をする設計士さんや工務店の担当の方は多いと思いますが、果たして土地の地耐力調査からどう分析し、 「土地の素顔」を読み取ったか、そしてその結果としてどのような基礎計画になったかといった説明をまじめに行っているのでしょうか?

八ヶ岳南麓は全体的に見れば地盤の良いところと云われていますが、場所によっては鹿沼ツチ(地元ではミソツチとかバカッツチと呼んでいます) といわれ、植木のつぎ木につかうくらいしか用のない軟弱地盤もあります。前回お話したように、地震が少なく地盤のよい八ヶ岳の幸運にあぐらをかき、赤土が見えたから地山確認が出来たとか、お施主さんに「良い地盤ですよ、ほら赤土でこれなら安心です」といったフィーリングで基礎設計をしたり、 しっかりした基礎設計をコストがかかりすぎるという根拠だけで、何の科学的・法的な根拠もなくオーバースペックとして設計を変更していまうとしたら、一連の耐震疑惑で露呈した鉄筋を減らすような発想にも似ており、 その意識と責任感のなさにゾッとしてしまいます。

先述のとおり赤土は確かに一般的な木造建築を支える地耐力を有していますが、30kN/㎡の数値が2m以上確保されなければ危険要因ありとして慎重にならなければいけません。赤土の層が1mあってもその下が又軟弱地盤の可能性もある訳です。

日本沈没という映画が新しいキャストで再度上映されましたが、立派な建物がその重みで徐々に沈没していかないように、これから建築をお考えの皆様は、プランや間取りに入る前に、 更には土地を購入しようとされる方は特に地面の下の素性を良く見極めて頂きたいと思います。




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