大開口の窓とウッドデッキで庭と室内を一体化したコンパクトデザイン。小さく建てて大きく暮らす家

この事例の特徴

  • デッキ・テラス
  • ライフスタイル
  • 大開口
  • 書斎

広大な土地を3つに分割

オルケアの建築は多くの場合、土地探しからご一緒させていただきます。ご紹介するY様の事例も、条件に合う土地を探すところから始まりました。眺望や標高、市街地との距離などいくつかのご希望に沿う場所を探し、物件を何件かリストアップしていきます。その中に、Y様が特にご興味を持たれた土地がありました。眺めがよく地質もしっかりしておりアクセスも悪くありません。しかし残念ながらその場所は広大な土地の一部で、地権者は分譲を望んでいませんでした。

間近に八ヶ岳を望める素晴らしい眺望

オルケアはこの広大な土地を、地権者と施主様双方にとって良い形で活用できないものか考えました。同じ時期に土地を探しておられたお客様のうち、ご希望の近いお客様に一人ずつお話しをして、現地にお連れしました。幸いなことに、この土地を気に入ってくれるお客様がすぐに見つかりました。土地はオルケアが一括で購入し、3分割して3組のお客様にお渡しするようにしました。一括で売却したいと考えていた地権者の方と、土地を探していた施主様それぞれにメリットのある解決策となりました。

コンパクトでインパクト

敢えて制約を設けた家づくり

設計の初期段階で、Y様との間でキーワードとなったのは、「Small but Cozy」「Small but VIVIT」というフレーズでした。コンパクトなデザイン・設計ながら、ゆったりと気持ち良く暮らせる家。コンパクトでインパクトのある建築。必要十分な大きさの中に、豊かな暮らしのエッセンスを詰め込んだ設計。これはオルケアが大事にしている考えでもあり、Y様と意気投合した設計方針でした。敢えて制約を設けることで、家づくりのプロセスをもっと楽しみたい。そうしたY様の趣向に触発され、オルケアのスタッフからも様々なアイデアが出ることになりました。

木工が趣味のご主人。家具や外構なども、ご自身で作ってしまいます。

敷地200坪の中の15坪

まずはじめに、1階の広さを決めました。3間 x 5間 の長方形を基準とし、この長方形の持つ美しさを活かすことになりました。1間は畳の長辺の長さで1.82m。3間が5.46m、5間は9.1mとなります。3間 x 5間 の長方形がちょうど15坪です。この長方形の中を細かく区切って生活するのではなく、この制約の中でいかに「大きく暮らすか」が今回の家づくりのポイントになります。

導線の設計、室内と一体化したテラスが実現するインパクト

小さくても大きく住める生活導線

導線の設計から導かれる生活空間の構造

限られたスペースを有効に使うには、綿密な生活導線の設計が欠かせません。煩雑な導線の中での生活は、皆様の想像以上に暮らしを不便にしてしまいます。1階部分の3間 x 5間 15坪とそれに続く2階のスペースを、「リビング」や「キッチン」といった機能で区切るのではなく、全体を一つの生活空間としてひとつずつ設備の位置を決めていきました。大開口の窓でウッドデッキと一体となったリビングを中心に、キッチンや水回りを隣接させます。ピアノが趣味である奥様のピアノ部屋や、ご主人の書斎も、部屋として区切るのではなく広いひとつの空間の一部として設計しています。朝起きて、朝日を浴びながらリビングへ。デッキから庭を眺めて洗面へ。キッチンで調理した料理をリビングへ、ウッドデッキへ。図面の上で生活のイメージを膨らませながら何度も繰り返し導線を確認していきました。

庭と室内が一体となった広々としたリビング空間

段差をなくしたリビングとテラス

リビングには大開口の窓を設け、その先のウッドデッキは室内と同じレベルの高さにしています。さらにその先の庭へのアプローチも、できるだけ高さを変えずに平面が続くように考慮されています。こうすることで、リビングから一体となったテラス、そして庭と空までが一つの生活空間としてつながります。建物は庭の一部であり、庭もまた部屋の一部であるという思想が、坪15坪の建築を敷地全体200坪の家として作り上げ、敷地全体の素晴らしさを部屋の構造に結びつけてくれました。

テラス側から見たリビング

土の高さに近づけたウッドデッキは、雨の時の浸水で腐食が進んでしまう可能性があります。写真は一見、木部と土が接しているように見えますが、ウッドデッキの下には石積みを設けてあり、雨天時の雨に直に浸らないように処置されています。また、建物の周りにはぐるっと一周の排水路を設けており、雨量が多くてもウッドデッキ部や基礎部分に水が入り込まないよう設計されています。

施主様と一緒に、アイデアをぶつけ合った家

「コンパクト」に対するチャレンジ以外にも、様々なアイデアを実現することができました。書斎のデスクにはA4のトレイがちょうど入るような引き出しを取り付けました。大げさなデスクや引き出しではなく、その時必要なものが、必要な分だけぴったり収まる収納です。

絵画のように風景を切り取る窓

空気の澄んだ日には、書斎の窓から赤岳が綺麗に見えます。窓が、まるで絵画のように美しい風景を切り取るように、その位置や高さについて、綿密な設計を行いました。

窓から望む赤岳


イケアの家具が埋め込まれた玄関スペース

上の写真の四角い箱は、玄関です。「普通の玄関だと、面白くないから」というご主人のアイデアで、この形になりました。

玄関の脇に引き戸が付いていますが、ここにはイケアのクローゼットがそのまま入っています。サイズを合わせてちょうどこの場所に入るように、玄関の設計を行いました。

ダイニング上部には、懸垂用のフックを設置

ダイニングの上、2階(ロフト)部分の床に、3つの金具がついています。ロープを引っ掛けて懸垂運動をするために取り付けたものです。ロフト部分の柵や、階段の手すりなどの建具には、全て木材ではなく金属を利用しています。華奢な躯体でも強度のある金属にすることで、視界を遮らず空間の広がりを保つ工夫です。ダイニングテーブルは、フローリングと同じ木材で作りました。同じ方向に並ぶ木板のパターンが、空間の広がりを整えます。

どんな暮らしをなさりたいか

コンセプト作りからのお手伝い

家が完成したとき、私たちには「出し尽くした」という達成感がありました。Y様とは家づくりに対する様々な可能性をともに検討し、考えられる限りのアイデアをぶつけ合ったという満足感がありました。ここまでご一緒できたことには、「コンパクトデザイン」、「小さく建てて大きく暮らす」といった家づくりのコンセプトが施主様の中でしっかりと確立されており、それを私たちと共有してくださったからだと思います。

ご主人作の壁掛け

私たちは初めてお会いするお客様に、「どんな暮らしをなさりたいか」という質問をよくします。暮らしのイメージが具体的でなければ、それを実現する手立ても浮かびません。それは家づくりのコンセプトであり、ルールであり、時として「制約条件」ともなります。Y様とご一緒させていただいた家づくりでは、「200坪の敷地と15坪の建築」という明確なルールや、「小さく建てて大きく暮らす」という言葉に象徴されるY様ご自身の「暮らし」に対する具体的なイメージが、私たちの想像力を刺激しました。家づくりの楽しさを再確認することができ、オルケアにとっても非常に貴重な事例となりました。