スキップフロアの個性的な家:傾斜した土地と林に囲まれた環境の特徴を活かす

この事例の特徴

  • オーディオ・ルーム
  • 吹き抜け
  • 暖炉
  • 書斎

美しい松林の中に佇むO様邸

土地の形状による制約を、プラスに活かす工夫

採光と斜面の問題をどう解決するか

オルケアの建築は、その土地を「読む」ことから始まります。土地探しからご一緒させて頂くケースも多いですが、今回ご紹介する事例は、施主様がすでに土地をご準備いただいた段階からご提案が始まりました。その土地はとても特徴的で、南側は松林に覆われていました。建築を設計するにあたって、南側からの採光は重要です。しかしこの場所では、南側からの十分な採光が期待できそうにありませんでした。

八ヶ岳での建築では、西日の扱いも重要です。特に標高の高い寒い地域では、季節ごとの日の当たり方を計算し、西側の採光も活かすようにします。夏場の西日は避けながら、冬場は西日が室内を暖めてくれるような設計を行います。西日が直接リビングに流れ込んでしまうと特に夏場は暑くて仕方ありませんが、冬場だけ特定の場所を暖めてくれるように上手にコントロールすれば、西日も部屋を暖めるために一役買ってくれます。冬場、日が落ちるまでの間に優しく室内に注ぎ込む西からの陽は、優しく身も心も温めてくれます。

土地の南東を覆う林

しかし今回の土地は、敷地内で東側に向かって大きな傾斜がついていました。そのため西からの光も、傾斜の影響で十分に届かない可能性があります。また、傾斜の上に家を建てなければならないため、大規模な基礎工事が必要となってしまいます。当然予算もありますから、設計上の工夫で工事費用を抑える必要がありました。

スキップフロアー構造による、個性的な居室と書斎

施主様と協議を重ねた末に導かれた解は、「スキップフロアー」による傾斜の克服でした。スキップフロアーとは、フロア内に段差を設ける建築構造です。玄関を入った先のリビング内には段差があり、段差を一つ降りたところに暖炉や書斎を配置することにしました。リビングの手前部分とキッチン、2階の寝室には十分な採光を取り入れました。斜面に向かって階段を上がる2階部分は、ちょうど宙に浮いたような感覚の場所になります。

リビングの段差を挟んで、右手がダイニング、左手に暖炉


ダイニングの吹き抜けで十分な光を確保

斜面下側に配した書斎には周囲の風景を切り取るように大きな窓を設けました。南と東を赤松の混合林に囲まれた静かな場所です。赤松は冬も葉が落ちないため、1年を通して採光はあまり期待できませんが、大きな窓で外の風景を切り取ることで、美しい赤松の混合林を居住空間内の風景の一つとして取り込むことができました。静かな落ち着いた風景の中で、仕事に趣味に没頭できる特別な書斎が完成しました。

自然の風景と一体になった書斎

設計上の工夫が工事費用を低減

スキップフロアー構造には、「工事費用の低減」という目的もありました。傾斜のある土地の上に、玄関から1階部分が水平になる建築を実現するには、大規模な基礎工事が必要となり、その分工事費用もかさんでしまいます。スキップフロアーを採用することで、基礎工事の規模を抑えることができました。そこにある土地の形状に逆らわず、うまくその形状を活用することで、O様だけの特別な生活空間が出来上がりました。

施主様と一緒に、細部までこだわり抜いた1軒

ひとつひとつのこだわりの積み重ねが、その人だけの暮らしを作り上げる

施主様とともに、細かい部分まで手を抜かずに最後まで考え抜くのも、オルケアの信条です。

ひとつひとつ素材を選び、完成したキッチン

キッチンでは、その素材や配置はもちろん、流しやの棚の高さ、奥行きに至るまで、何度もシミュレーションを重ねて設計していきました。オルケアのスタッフの家に奥様をお連れしては、実際にキッチンを使っていただきながらその高さをご確認いただきました。

ご主人のご趣味は音楽鑑賞


1階にはピアノ部屋を設置

ご主人の趣味は音楽鑑賞、奥様の趣味はピアノです。1階部分にはピアノと音響設備を置く部屋を設けました。防音はもちろん、スピーカーの配置などもひとつひとつ丁寧に検討していきました。

書斎はご主人の思いがぎっしりと詰まった空間です。欧米の図書館にあるような、天井まで届く大きな書棚がご希望でした。書棚にかけるハシゴはロフトと共用できるようにし、不要な時には書棚の合間に収納できるようにしました。L字に配した長いデスクは、資料や書物をめいっぱい広げて作業ができるように工夫したものです。

家づくりと戦友

細かいことを挙げればキリがありませんが、この家のひとつひとつが施主様とご一緒させていただいた家づくりの思い出です。

あらゆる部分に「そうした」理由があります。

家づくりの最中のある晩、腰板の上にかぶせる木材の厚みについてご説明しているとき、O様が少し疲れたような表情をされていました。私たちが、「もう少しです。腰板の質感は、部屋の印象を大きく左右します。しっかりと選びましょう!」と声をかけたところ、O様は気合を入れ直すような仕草をしてサンプルを手にとってくださいました。

家でのんびりとお酒を飲みながらその腰壁を見るたびに、オルケアさんに励まされたことを思い出す。家づくりは戦いのようなもので、オルケアさんは戦友のようなものです。

施主のO様からいただいた言葉です。初めてその土地を訪れてから約1年間。施主様とともに頭を悩ませながらも、一生懸命がんばってきた長い時間は、この一言のためにあったような気がします。ひとつひとつのこだわりと思いが、その人だけの暮らしを実現していく。家づくりとはそういうものだと実感できた事例です。

ご主人手作りの蒔置き場